昆虫の社会における「おばあちゃん効果」の発见 ―ヒトと昆虫の社会をつなぐ―研究成果
昆虫の社会における「おばあちゃん効果」の発见 ―ヒトと昆虫の社会をつなぐ― |
东京大学大学院総合文化研究科 広域システム科学系 博士课程3年 植松 圭吾
东京大学大学院総合文化研究科 広域システム科学系 助教 柴尾 晴信
东京大学大学院総合文化研究科 広域システム科学系 教授 嶋田 正和
2.発表概要:
私たちは昆虫において、雌の成虫が繁殖を终了した后も生存し、自らを犠牲にして他の个体を守るという现象を発见しました。今回の発见は、同じく女性が繁殖终了后も长く生存するヒトの社会の进化に新たな洞察を与える成果であり、繁殖终了后の延命をもたらすメカニズムの解明につながることが期待されます。
3.発表内容:
ヒトの女性は、闭経を迎え、繁殖能力を失った后も长生きします。しかしながら、繁殖终了后も长く生存することが进化的に维持されているのは大きな谜でした。近年の研究から、闭経后の生存は自らの繁殖を犠牲にしてでも、孙の养育など血縁者の繁殖を助けることにより进化的に维持されているという「おばあちゃん仮説」が提唱されています。繁殖能力を失った个体が血縁者の繁殖を助ける例はヒト、クジラなどの知能の高い哺乳类で知られており、年长者のもつ経験?知识がその进化を可能にしたと考えられています。しかし一方で、哺乳类以外の社会性生物では、繁殖终了后の个体による利他的行动は详细に调べられていませんでした。
昆虫においてはアリやミツバチなどで社会性が知られていますが、アブラムシの仲间にも社会性を持つ「社会性アブラムシ(注1)」が存在します。今回我々は、常緑树のイスノキに虫こぶ(注2)を形成する社会性アブラムシであるヨシノミヤアブラムシ(注3)という种を研究対象としました。本种の虫こぶは1匹の个体から形成され、最终的には数千匹を収容できる巣のような构造になります(図1)。虫こぶの中にいるアブラムシは単為生殖によって増殖するため、1个の虫こぶ内で生息している虫たちは全て同じ遗伝子を持ったクローンの集団です。このヨシノミヤアブラムシにおいて、翅を持たない无翅成虫が、虫こぶの中に侵入する捕食者に対して自己犠牲的な防卫行动を行うことを発见しました。
无翅成虫の腹部を刺激すると、腹部から粘着性の液体を分泌します(図2)。野外の虫こぶを调べると、分泌液によって捕食者に张り付いている无翅成虫が见られたことから、无翅成虫の分泌行动は外敌に対する防卫ではないかと考えました。そこで、実験室内において天敌のテントウムシ幼虫を虫こぶ内に导入する実験を行ったところ、无翅成虫が张り付くことが、捕食者の虫こぶ内への侵入を防ぐ効果を持つことがわかりました。しかしながら、无翅成虫はいったん敌に付着すると离れることが不可能となり、捨て身で防卫することにより虫こぶ内の他个体を守っています。
防卫した无翅成虫を顕微镜下で解剖すると、ほぼ全ての个体が子を产み终えていました。そこで、防卫を行う时期の无翅成虫を実験室内で饲育したところ、大部分の个体が繁殖能力を失った后も长く生存していました。さらに、成虫の体内を组织学的手法で调べた结果、子を产み终えた成虫の腹部は敌に张り付く际に用いる分泌液で満たされていました。したがって、繁殖を终了した成虫が防卫物质を蓄えることで防卫を行うと考えられます。
以上の结果から、ヨシノミヤアブラムシでは繁殖を终えた雌の成虫が自己犠牲的な防卫を行うことにより血縁个体を助けることがわかりました。ヒトではおばあちゃんが蓄えた知识?経験が社会の中で役立っていますが、ヨシノミヤアブラムシにおいても、加齢に伴い蓄えられた防卫物质が血縁个体を守るのに大きく贡献しています。今回の研究は、知能の高い哺乳类に限らず繁殖终了后の利他行动の进化が可能であることを示すものであり、今后の研究によって、繁殖终了后の延命をもたらす进化学的?生理学的メカニズムの解明にもつながることが期待されます。
4.発表雑誌
Current Biology誌、オンライン版に6月17日(アメリカ東部時間)掲載予定
论文タイトル
“Altruistic colony defense by menopausal female insects”
(闭経を迎えた昆虫の雌による利他的なコロニー防卫)
Keigo Uematsu, Mayako Kutsukake, Takema Fukatsu, Masakazu Shimada, Harunobu Shibao
5.注意事项
解禁日时:2010年6月18日(金)午前1时(日本时间)
6.问い合わせ先
东京大学大学院総合文化研究科広域システム科学系
植松 圭吾
7.用语解説:
(注1)社会性アブラムシ
ミツバチ、アリ、シロアリ、アザミウマ、寄生蜂、キクイムシなどに加え、アブラムシにも社会性を有するものがいる。社会性昆虫の特徴として、繁殖に専念する个体(例:女王蜂)のほかに、自分の繁殖を犠牲にしてメンバーを助ける利他的阶级(例:働き蜂)の存在が挙げられるが、社会性アブラムシの场合、利他行动を行うのは「兵队」と呼ばれる个体である。兵队の主な役割は外敌に対するコロニー防卫であるが、巣内の清扫や壊れた巣の修復をする兵队も知られている。
(注2)虫こぶ
虫こぶは、昆虫類などの寄生の影響により、植物の芽や葉などの一部がふくれて変形したもので、内部が空洞になっており、そこに暮らす昆虫に食物と住みかを提供する。虫えい(ちゅうえい)やゴール (Gall) と呼ばれることもある。アブラムシにおいては、摂食時に口針から注入される唾液成分によって虫こぶ形成が誘導されると考えられているが、その機構は不明である。
(注3)ヨシノミヤアブラムシ
アブラムシ科(Aphididae)ヒラタアブラムシ亜科(Hormaphidinae)ムネアブラムシ族(Nipponaphidini)に属する昆虫。学名はQuadrartus yoshinomiyai。常緑のイスノキ(Distylium racemosum)に径3 cmほどの不定形の虫こぶを形成する。
図はこちら(笔顿贵)

